目次
- はじめに — なぜインドネシア市場なのか
- インドネシア市場の基本情報
- 市場規模と成長性
- 主要ECプラットフォームと特徴
- インドネシアで売れる日本製品カテゴリ
- 参入前に押さえるべき法律・規制
- 物流・配送・決済の課題と解決策
- マーケティング戦略
- 成功事例から学ぶ進出のポイント
- インドネシア市場への参入~ステップガイド~
- まとめ ~インドネシア市場で未来をつかむ~
インドネシアは、人口約2億7,000万人を誇る東南アジア最大の市場であり、経済成長率も高く、今まさに世界中の企業が注目する新興国です。近年ではスマートフォンの普及とECプラットフォームの成長が加速し、日本から商品を直接販売する越境ビジネスが急速に広がっています。
特に化粧品や健康食品、ファッション、文房具、そしてハラール対応商品など、日本製品は品質が高い・安心できるという理由から高い支持を得ています。一方で、関税や認証制度、物流の遅延、決済方法の多様化など、インドネシア特有の課題も少なくありません。
この記事では、インドネシア市場の基本情報から、人気プラットフォーム、売れる商品、法律や物流のポイント、マーケティング戦略、そして実際に進出するためのステップまでを詳しく解説します。これから現地市場に挑戦したい事業者や、新たな販路を開拓したい経営者の方にとって、具体的な行動計画を描くうえで役立つ内容となっています。
1. はじめに — なぜ今インドネシア市場なのか
インドネシアは、東南アジア諸国連合(ASEAN)の中でも最大の人口と経済規模を誇り、世界第4位の人口大国として存在感を高めています。人口の半数以上が30歳未満という若年層の多さは、消費市場としての将来性を示す大きな要因です。
また、毎年安定的な経済成長を続けており、購買力の向上とともに中間所得層が急増しています。

さらに、スマートフォンやインターネットの普及率が急速に高まっており、特に都市部ではモバイル決済やオンラインショッピングが生活の一部として定着しています。こうした背景は、海外からのEC参入にとって非常に有利な条件と言えます。
日本企業にとっても、インドネシアは魅力的な市場です。日本製品は品質や信頼性の高さから高評価を受けており、化粧品、食品、家電、文房具、アパレルといった幅広い分野で需要が高まっています。また、日本文化への興味関心も強く、アニメやキャラクターグッズ、和食関連商品なども人気カテゴリーに含まれます。
一方で、現地市場には法律や認証制度、物流のインフラ、決済方法の多様化など、乗り越えるべき課題も少なくありません。しかし、こうした課題を正しく理解し戦略的に取り組むことで、長期的な成長と安定した売上基盤を築くことが可能です。
インドネシアは、人口の多さ・経済成長・デジタル化という3つの強力な追い風を持つ市場です。これからの海外展開戦略を考えるうえで、最も注目すべき国の一つと言えるでしょう。
2. インドネシア市場の基本情報
インドネシア市場を理解するためには、人口構成や経済規模、購買力の変化、そしてデジタルインフラの発展状況を押さえることが不可欠です。これらの要素は相互に影響し合い、市場の成長スピードや消費者行動に直結します。ここでは、進出を検討するうえで必ず知っておくべき基礎データと特徴を整理します。

2-a. 人口・経済規模・消費動向
インドネシアは人口約2億7,000万人を抱える世界第4位の人口大国であり、そのうちおよそ半数が30歳未満という若年層中心の社会構造を持っています。都市部への人口集中が進み、中間所得層の増加により可処分所得が拡大。結果として、購買意欲が旺盛な消費者層が急成長しています。特にジャカルタ、スラバヤ、バンドンなどの主要都市では、オンラインショッピングが日常化しています。
経済面では、近年も年平均5%前後の成長率を維持しており、ASEAN諸国の中でも安定的な成長を遂げています。経済成長と同時に、デジタル化やインフラ整備も進んでおり、消費行動にも大きな変化が見られます。
2-b. 中間所得層の拡大と購買力
この10年で中間所得層の人口は大きく増加し、生活水準の向上とともに嗜好も多様化しています。高品質・高付加価値の商品への需要が高まり、日本製品のように安全・高品質・信頼性がある商品は選好されやすい傾向があります。特に健康志向や美意識の高まりにより、化粧品・健康食品・オーガニック製品などの分野で需要が拡大しています。
2-c. モバイル・インターネット普及率
インドネシアはインターネット利用者が約2億人を超え、その大半がスマートフォン経由でアクセスしています。通信インフラの発展に伴い、都市部だけでなく地方都市や農村部でもモバイルインターネットが利用可能になりつつあります。これにより、地方の消費者もオンラインで商品を購入する機会が増加しています。
SNS利用率も高く、Instagram、TikTok、Facebook、WhatsAppなどは日常生活に密着しています。これらは単なるコミュニケーションツールにとどまらず、商品の情報収集や購買意欲の喚起において重要な役割を果たしています。
3. 市場規模と成長性
インドネシアのEC市場は、急速な経済成長とデジタル化の波に乗って拡大を続けています。特に海外から直接商品を購入する消費者が増えており、越境ビジネスの需要は年々高まっています。この成長の背景には、購買層の広がり、ECプラットフォームの多様化、物流・決済環境の改善など、複数の要因が絡み合っています。
現状の規模と将来の予測、そして越境分野が伸びる理由を整理します。
3-a. 現在の市場規模と予測
インドネシアのEC市場規模は、すでに数百億ドル規模に達しており、ASEAN諸国の中でも最大級です。政府や国際機関の予測では、今後も年率10〜15%前後の成長が見込まれており、2025年以降も右肩上がりのトレンドが続くとされています。この背景には、都市部の購買力向上だけでなく、地方都市や農村部にまでオンライン購買文化が浸透し始めていることが挙げられます。
3-b. 越境分野の需要が伸びる理由
国内製品だけでなく、海外ブランドや高品質な外国製品を求める消費者が増えていることが、越境分野成長の大きな原動力です。特に日本製品は品質・安全性・デザイン性の高さから支持され、現地の若年層や富裕層に強く訴求しています。また、SNSや動画プラットフォームでの商品紹介が購買意欲を高め、直接海外から購入する流れを後押ししています。
3-c. 国内ECとの違い
国内のECは価格競争が激しく、低価格・大量販売型のビジネスモデルが主流です。一方、越境分野では希少性やブランド価値を重視する傾向が強く、適正価格で販売できる可能性があります。このため、中小企業やニッチブランドにとっても参入チャンスが広がっています。
4. 主要ECプラットフォームと特徴
インドネシア市場に進出する際、どのECプラットフォームを選ぶかは成功を左右する重要な要素です。現地では複数の大型モールが競争を繰り広げており、それぞれ利用者層や強みが異なります。自社の商品特性やターゲット層、販売戦略に合わせて最適なプラットフォームを選ぶことが、売上拡大への近道です。ここでは、現地で代表的な主要モールの特徴を整理します。
4-a. Shopee(ショッピー)
東南アジア全域で急成長しているモールで、インドネシア国内でも利用者数が最多。UIがシンプルで使いやすく、モバイルアプリからの購入比率が非常に高いのが特徴です。割引キャンペーンや送料無料プロモーションを頻繁に実施し、若年層からの支持が厚いプラットフォームです。
4-b. Tokopedia(トコペディア)
インドネシア発の大手ECモールで、国内の出店店舗数が非常に多く、幅広い商品カテゴリーをカバーしています。現地企業との提携が強く、配送ネットワークや決済の利便性に優れています。国内顧客向けの販売に特に強みを持つ一方で、越境出店にも対応しつつあります。
4-c. Lazada(ラザダ)
中国アリババグループ傘下のプラットフォームで、複数国への同時展開が可能。特に越境EC向けのサポートが充実しており、在庫や配送の一元管理がしやすい点が特徴です。ファッションや家電、生活雑貨の分野で強い存在感を持っています。
4-d. TikTok Shop(ティックトック・ショップ)
ショート動画とECを融合させた新しい販売形態が特徴で、特に若年層へのアプローチ力が高いプラットフォームです。ライブコマースやインフルエンサーとの連動企画を通じて、衝動買いを促す力が強く、話題性の高い商品に向いています。
4-e. その他注目モール
BukalapakやBlibliといったプラットフォームも一定の利用者層を持ち、特定カテゴリーや地域に特化した販売戦略を展開できます。特にBukalapakは地方市場への強いネットワークを持ち、Blibliは中高所得層をターゲットとした高価格帯商品の販売に向いています。
5. インドネシアで売れる日本製品カテゴリ
インドネシアでは、日本製品は品質が高く、安全で信頼できるというイメージが定着しています。そのため、他国製品に比べて付加価値のある商品として受け入れられやすく、適正価格でも購入してもらえる傾向があります。特に若年層や中間所得層を中心に、日本ならではのデザインや機能性を求める声が高まっており、次のようなカテゴリーが高い人気を誇ります。
5-a. 化粧品・美容用品
スキンケアやメイクアップ商品は、日本製というだけで安心感を与えられます。美白、保湿、UV対策などの機能性が高い製品は特に好まれ、現地女性の美容トレンドと合致しています。また、ナチュラル成分やオーガニック志向の商品も注目度が上昇中です。
5-b. 健康食品・サプリメント
健康志向の高まりとともに、日本製のビタミン、コラーゲン、青汁、酵素などの健康補助食品が人気です。特に安全性や原材料表示の透明性が重視され、認証や検査データがある商品は信頼を得やすいです。
5-c. アパレル・ファッション
シンプルで高品質な日本ブランドの服やバッグ、靴は、トレンドに敏感な若年層に好まれます。特に機能性素材(吸湿速乾、防水、防臭など)を使った製品は差別化につながります。
5-d. 文房具・雑貨
日本製の文房具はデザイン性と機能性の両面で評価が高く、学生やクリエイターを中心に需要があります。キャラクターグッズやデザイン性の高い雑貨もギフト需要が見込めます。
5-e. ハラール対応商品
イスラム教徒が人口の大多数を占めるインドネシアでは、ハラール認証を取得している商品が安心して選ばれます。食品や化粧品においては、ハラール対応が購買の大きな決め手になるため、現地向け展開では重要なポイントです。

6. 参入前に押さえるべき法律・規制
インドネシア市場でビジネスを行う場合、事前に法律や規制を理解しておくことは必須です。特に食品や化粧品、健康食品などのカテゴリーでは、認証や許可がなければ販売できないケースが多く、違反すると罰金や販売停止などのリスクがあります。ここでは、越境販売や現地販売を行う際に押さえておくべき主要な制度を整理します。
6-a. BPOM認証
食品、飲料、医薬品、化粧品などを販売する場合、インドネシア国家食品医薬品監督庁(BPOM)の認証が必要です。輸入時点で申請・審査を通過していなければ、通関ができない場合があります。成分表示やパッケージ情報はインドネシア語表記が求められるため、現地対応の準備が必要です。
6-b. ハラール認証制度
イスラム教徒が人口の約87%を占めるインドネシアでは、ハラール認証が事実上必須の商品分野があります。食品だけでなく化粧品や日用品でも認証が求められることがあり、原材料や製造工程の証明書類を揃える必要があります。
6-c. 関税・輸入規制
インドネシアは一部の商品に高関税を課しており、輸入コストが価格競争力に直結します。また、輸入禁止品目や数量制限のある商品もあるため、事前に貿易関連の規制を確認することが重要です。
6-d. 現地法人設立の有無
継続的かつ大規模な販売を行う場合は、現地法人設立が求められる場合があります。外資規制によって一部業種では資本比率や業務範囲が制限されることもあるため、専門家のサポートを受けながら検討するのが安全です。
7. 物流・配送・決済の課題と解決策
インドネシア市場における最大のハードルのひとつが、物流・配送・決済の仕組みです。国土が広く、島々が分散している地理的条件や、都市部と地方でのインフラ格差が、配送速度やコストに大きく影響します。また、現地特有の決済習慣も理解しておく必要があります。これらの課題を事前に把握し、適切な解決策を講じることで、顧客満足度とリピート率を高めることが可能です。
7-a. 配送コストとリードタイム
インドネシアは約17,000の島々から構成されており、都市部から離れた地域への配送は時間もコストもかかります。海外からの越境配送では、航空便と海上便の使い分けや、現地フルフィルメントセンターの活用が効率化の鍵となります。
7-b. 現地配送網の特徴
都市部は宅配インフラが比較的整っていますが、地方では配送スピードや追跡機能が限定的な場合があります。現地配送業者(JNE、J&T Expressなど)との連携により、信頼性とカバー範囲を確保することが重要です。
7-c. 主流の決済方法
インドネシアでは、クレジットカード普及率が低く、代金引換(COD)や銀行振込、eウォレット(OVO、GoPay、Danaなど)が主流です。複数の決済手段を提供することで、購入のハードルを下げることができます。
7-d. 越境EC物流サービスの活用
DHLやFedExといった国際物流企業だけでなく、ShopeeやLazadaなどのプラットフォームが提供する越境配送サービスも活用可能です。これにより、配送コストの抑制や通関手続きの簡略化が期待できます。
8. マーケティング戦略
インドネシア市場では、価格や品質だけでなく「どのように商品を知ってもらい、信頼してもらうか」が成功のカギを握ります。特にSNS利用率が非常に高い国であるため、オンライン上での情報発信やコミュニケーション戦略は欠かせません。現地の文化や消費者心理に合わせたマーケティングを行うことで、短期間で認知度と売上を拡大することが可能です。
8-a. SNSの活用
Instagram、TikTok、Facebookは日常生活に深く浸透しており、商品紹介やブランドストーリーの発信に最適です。特にTikTokでは短尺動画を活用したプロモーションが効果的で、ユーザーの衝動買いを促す力があります。
8-b. インフルエンサー(KOL)との連携
現地の人気インフルエンサーを起用することで、信頼性と認知度を同時に高められます。ターゲット層に近いフォロワーを持つKOLを選び、レビューや使用感を自然に発信してもらう手法が効果的です。
8-c. 広告出稿のポイント
Facebook広告やGoogle広告はターゲティング精度が高く、地域や年齢、興味関心に合わせた配信が可能です。特に大規模セールや新商品のローンチ時に合わせて集中的に広告を打つと、短期的な売上増が期待できます。
8-d. ブランドローカライズと顧客対応
単に翻訳するだけでなく、現地の文化や表現方法に合わせたローカライズが重要です。たとえば広告コピーやパッケージデザインをインドネシア語に最適化し、問い合わせやカスタマーサポートにも現地語対応を導入することで、顧客の信頼を得やすくなります。
9. 成功事例から学ぶ進出のポイント
インドネシア市場で成果を上げている企業の多くは、単に商品を輸出するだけでなく、現地文化や消費者の行動パターンを深く理解し、それに合わせた戦略を展開しています。ここでは、中小企業や地域ブランドの実例を交えながら、成功につながる共通の要素を整理します。
9-a. 中小企業の成功パターン
地方の食品メーカーが、自社の特産品を現地モールに出品し、SNSと連動して販売促進を行った例があります。現地の食文化や嗜好に合わせて味やパッケージを調整し、ハラール認証を取得したことで販売先が大幅に拡大しました。
9-b. 地域発ブランドの海外展開事例
ある伝統工芸品メーカーは、ストーリーテリングを重視したマーケティングを展開。制作背景や職人の想いを動画で紹介し、現地の富裕層や観光客層にアピールしました。このように商品の物語を打ち出すことは、高価格帯でも受け入れられる大きな要因となります。
9-c. 失敗例と回避策
一方で、現地の規制や物流事情を十分に調査せずに販売を始めた結果、通関トラブルや配送遅延で顧客満足度が低下したケースもあります。こうした失敗を防ぐには、事前の市場調査、専門家や現地パートナーとの連携、段階的なテスト販売が有効です。
10. インドネシア市場への参入~ステップガイド~
インドネシア市場への参入は、準備と計画次第で成功の確率を大きく高められます。重要なのは、いきなり大規模な投資をするのではなく、小さく始めて市場の反応を見ながら改善を繰り返すことです。ここでは、実際に販売を始めるまでの流れをステップごとに整理します。
10-a. ステップ1:リサーチ
ターゲット顧客の年齢層や嗜好、購買チャネルを把握します。競合調査も欠かせず、価格帯や販売方法、レビュー内容から差別化ポイントを見つけます。
10-b. ステップ2:出品準備
商品選定後、必要に応じてパッケージやラベルのローカライズを行います。食品や化粧品の場合は、ハラール認証やBPOM認証などの取得を事前に進めます。
10-c. ステップ3:プラットフォーム登録
Shopee、Tokopedia、Lazada、TikTok Shopなど、ターゲットに適したモールに出店します。販売手数料やプロモーション機能を比較し、複数プラットフォームで同時展開するのも有効です。
10-d. ステップ4:販売開始とプロモーション
販売初期はSNS広告やインフルエンサーとのコラボを活用して、短期間で認知度を高めます。レビュー獲得やリピーター施策を早い段階で実施すると、販売実績の積み上げがスムーズになります。
10-e. ステップ5:改善サイクルの構築
売上やアクセス解析のデータをもとに、商品ラインナップや価格、広告施策を見直します。市場の変化や競合動向を定期的にチェックし、柔軟に戦略を調整します。
11. まとめ ~インドネシア市場で未来をつかむ~
インドネシアは、人口規模・経済成長率・デジタル化のスピードという三拍子が揃った、世界でも有数の成長市場です。若年層を中心に購買意欲が高まり、海外ブランドへの関心も年々強まっています。日本製品は高品質・安全性・デザイン性といった面で強い競争力を持ち、適切な戦略を立てれば確かな成果が期待できます。
しかし、規制や物流、決済方法、文化的な違いといった障壁が存在するのも事実です。これらの課題を事前に把握し、現地に適した商品選定や販売チャネルの構築、そして文化や言語に配慮したマーケティングを行うことが、成功への近道となります。
インドネシア市場は今後も拡大が見込まれ、越境ビジネスの可能性はますます広がっていくでしょう。今回の内容を参考に、自社の強みを活かした形で現地展開の計画を練り、一歩ずつ着実に進めていくことが、長期的な成長と収益安定につながります。