2025/12/10
越境EC
AI真贋鑑定でリユースに「信頼」を|Entrupy共同創業者兼CEO・Vidyuth Srinivasan氏に聞く、ZenLuxeとの挑戦 1分で読めます
AI真贋鑑定でリユースに「信頼」を|Entrupy共同創業者兼CEO・Vidyuth Srinivasan氏に聞く、ZenLuxeとの挑戦 1分で読めます

  1. AI真贋鑑定ソリューション 「Entrupy」とは
    1. インドのアパートの一室から始まったEntrupy
    2. ブランド中古品のためのAI真贋鑑定ソリューション
    3. AIと人のダブルチェックがかなえる、高精度の鑑定
    4. 「大口バイヤー」が持つ膨大な学習データ
  2. 金銭保証と新機能で「信頼」を設計する
    1. 「お金を賭ける」ことで生まれた金銭保証制度
    2. . 鑑定結果を価格戦略に生かす新機能「Market Edge」
  3. 創業者の原体験と、偽造品のリアル
    1. 偽物が当たり前だった子ども時代
    2. 成分分析から判明した偽造品の健康被害リスク
  4. CEOの価値観に見るZenLuxeへの期待
  5. 越境ECで、ブランド中古品を安心して届けるために

 

 

ZenGroupが運営するプレミアム中古品専門の越境ECモール「ZenLuxe(ゼンラクス)」が導入する、AI真贋鑑定ソリューション「Entrupy(エントルピー)」の共同創業者兼CEO、Vidyuth Srinivasan氏にインタビューを実施しました。


日本の中古品は、管理の丁寧さや状態の良さから「Used in Japan」として海外から注目を集めています。特にラグジュアリーブランドの中古品は、アジアや欧米から高い人気があります。

一方、インターネットの普及や模倣手口の高度化などによって、見た目だけでは真贋を見分けることが難しい偽造品も増加しています。こうした中、ユーザーは「安さ」だけではなく、「本物であるという確信」を求めるようになっています。
そこでZenLuxeが導入したのは、AIを活用した真贋鑑定ソリューション「Entrupy」です。AIと人のダブルチェックによる高精度な真贋鑑定が特徴で、現在は90カ国以上の事業者に導入されています。


今回のインタビューでは、Entrupy誕生の背景から、AIと人のダブルチェックで実現する高精度鑑定、偽造品の知られざるリスク、さらに新機能「Market Edge(マーケットエッジ)」まで、ブランドリユースと越境ECの現場に直結するテーマについて、深掘りしています。

 

1. AI真贋鑑定ソリューション 「Entrupy」とは

1-a. インドのアパートの一室から始まったEntrupy

Vidyuth氏が仲間とともに真贋鑑定の研究を始めたのは、インドのアパートの一室。会社というより、ほとんど実験室に近い状態からのスタートだったと言います。しかし、「偽造品が当たり前のように流通している世界を変えたい」という想いは、当時から一貫していました。少人数で始まったこの取り組みは、徐々に世界のリユース事業者に広がり、今ではZenGroupのようなパートナーとともに、世界中のエンドユーザーに「本物を届ける」テクノロジー基盤の一部として機能するようになっています。

 

1-b.  ブランド中古品のためのAI真贋鑑定ソリューション

Entrupyを「二次流通市場で取り扱われる商品のためのデジタル指紋認証・AI真贋鑑定ソリューション」だとVidyuth氏は紹介します。主にブランドのバッグ、財布、革小物、スニーカー、そして最近ではアパレルやストリートウェアにまでその対象を拡大しています。高価格帯のアイテムを扱うリユース事業者が、本物であると自信を持って販売できるようにするためのソリューションが、Entrupyです。

ZenLuxeにおいても、プレミアム中古品の出品時にEntrupyを活用し、鑑定書という「第三者の証拠」を添えることで、海外のユーザーにも安心して購入してもらえる環境づくりを進めています。

 

1-c. AIと人のダブルチェックがかなえる、高精度の鑑定

出品者が専門デバイスを使って、バッグや財布のロゴ、縫い目、刻印、素材など、商品の細部を撮影します。その撮影データとブランド名や品番などの基本情報をクラウドに送信すると、クラウド上のアルゴリズムが膨大なデータと照らし合わせて本物か偽物かを判定。さらに、AIが出した結果を人間のエキスパートがチェックします。
インタビュー時点での鑑定精度は、99.86%に達しているとのこと。ZenLuxeのような越境ECモールにとって、これは自社の目利きだけに頼らない第三者の証拠を得られることを意味します。
Vidyuth氏は「AIが最初の判断をし、それが正しいかどうかを人間がチェックし、さらにその結果をもとにAIをアップデートしていく。このサイクルを回し続けることで、精度は年々高まっている」と語ります。

 

1-d. 「大口バイヤー」が持つ膨大な学習データ

前述の高い鑑定精度を支えるのは、地道かつ壮大なデータ収集の努力です。Entrupyはこの12年間、世界中から本物・偽物を問わず商品を集め続けてきました。その中には、まだサービスとしては対応していないブランドやカテゴリも含まれています。

Vidyuth氏は「私たちは、偽物の大口バイヤーなんです」と笑いながら話します。AIを鍛えるために、集めた全ての商品は一つひとつ撮影され、素材の違いや縫製のクセ、ブランドごとの特徴が細かく記録されていきます。
本物には、規定の品質基準や製造プロセスがあります。長年データを蓄積することで、AIは「本物はこういうブレ方をする」「この範囲を超えた違いはおかしい」といった基準を学習していきます。本物と偽物両方の膨大なデータを持ち、見るポイントが分かる状態になると、非常に高い精度で判断できるようになるといいます。
コロナ禍以降、誰でもスマートフォンから簡単に偽造品を注文できるようになり、また偽造品の手口も巧妙になっています。中には、あえて本物ではなく偽物を選ぶ消費者もいるほどで、市場としては大きな課題になっています。

Vidyuth氏は、「残念ながら偽造品を作る人たちを完全に止めることはできない。それでも、最新の偽物の情報を取り込み続けて、自分たちの側を進化させることはできる。そして、ビジネスと消費者を守ることが私たちの役割だ」と力強く語りました。

 

 

2. 金銭保証と新機能で「信頼」を設計する

2-a. 「お金を賭ける」ことで生まれた金銭保証制度

Entrupyの大きな特徴の一つである「金銭保証付きの鑑定」は、ZenLuxeにとっても、ユーザーに安心して購入してもらううえで非常に重要な要素になっています。
この保証制度が生まれたのは、2015年頃。サービスのローンチを前に、「自分たちは信頼を売る会社なのに、もし自分たちが信頼されなかったらどうするのか」という問いに向き合ったのがきっかけだといいます。
Vidyuth氏は、「自分たちの鑑定に本当に自信があるなら、間違えたときに責任を取る仕組みを作るべきだ」と考えました。そこで生まれたのが、鑑定書に金銭保証を付けるというアイデアです。

Entrupyの鑑定書付きで販売された商品には、自動的に金銭保証が付帯します。購入後に「本物か不安」と感じたユーザーがいれば、再鑑定を受け付けます。対象商品は販売店やEntrupyに送付され、Entrupy側で5人の外部鑑定士に再鑑定を依頼します。この5人のうち3人以上が偽物だと判断した場合、購入者には購入金額が返金され、問題のアイテムはEntrupyが引き取ります。
この仕組みは、単なる「保険」にとどまりません。誤判定があればEntrupy自身が損をするため、精度向上への強いインセンティブになります。また、システムをすり抜けた偽造品があれば、そのアイテムがデータベースに取り込まれ、AIの学習に活かされることで、次のアップデートにつながっていきます。
つまり、金銭保証制度は、ユーザーに安心を提供すると同時に、Entrupyの技術力を磨き続ける仕掛けにもなっています。

 

2-b.  鑑定結果を価格戦略に生かす新機能「Market Edge」

Entrupyが新たにリリースした「Market Edge」は、真贋鑑定の先にある「販売戦略」までを見据えた機能です。
Market Edgeでは、AIが鑑定済み商品のモデル名やスタイル、状態のランクなどを自動的に整理します。その上で、ユーザーの所在地などをもとに、主要なマーケットプレイスでのリアルタイムな販売価格を参照し、このコンディションなら、各マーケットにおけるおよその取引額を教えてくれます。

ZenLuxeのように数多くのブランド中古品を扱うECモールにとって、これは価格設定や在庫戦略を検討する際の強力な判断材料になります。「このバッグは、どの販売経路で、どの価格帯なら売れやすいか」という判断を、担当者の勘だけでなくデータに基づいて行うことができるようになります。
真贋鑑定からスタートしたEntrupyは、こうして「信頼できる情報」を軸に、リユースビジネス全体の最適化へと領域を広げようとしています。

 

3. 創業者の原体験と、偽造品のリアル

3-a. 偽物が当たり前だった子ども時代

インドの中流家庭に育ったVidyuth氏にとって、偽物は「特別なもの」ではなく、ごく身近にある存在でした。学生時代には、路上で買った安い偽物のスニーカーを週に何度も履き、本物の靴は「もったいないから」と特別な日にだけ履く。偽造品を選ぶことに、罪悪感のようなものはほとんどなかったそうです。

しかし、その感覚を一変させる出来事が起こります。趣味の長距離ツーリングのために事前にバイクを整備に出していたにも関わらず、ツーリング当日の深夜2時、森の中でクラッチワイヤーとバッテリーが同時に故障し、20km以上バイクを押して歩くことに。その後、整備工場のスタッフから告げられたのは、整備で交換したパーツの多くが偽物だったという事実。しかもそこは正規のサービスセンターでした。
「あのとき、これは命に関わる問題だと本気で感じました」と、Vidyuth氏は静かに振り返ります。
偽造品は「ちょっと安くてお得」なだけの存在ではなく、ときに命に関わるリスクになりうる。その気づきが、のちに事業を立ち上げる大きな原動力になりました。

 

3-b. 成分分析から判明した偽造品の健康被害リスク

あるイベントで、Entrupyが金属組成を分析するための質量分析装置を使う機会があり、デモ用に保管していた偽造品をスキャンしてみました。すると、ほぼ全ての偽造品に鉛が含まれていたことが判明しました。


その後、Entrupyでは偽造品の実態を調べるために、約1,100点の偽造品をランダムにピックアップし、表面塗料・金具・その他の素材にどのような成分が含まれているかを徹底的に分析しました。
その結果、7割以上の偽造品から、鉛やヒ素、カドミウムといった有害物質が検出されたといいます。特に、バッグや財布の表面塗料に含まれているケースが多く、肌に触れる、子どもが口に入れるなどの日常的な接触を通じて、少しずつ体内に取り込まれるリスクがあります。
「多くの人は、ガソリンスタンドに無鉛と書かれている理由さえ意識していません。でも鉛は、どんな少量であっても人体に有害だと昔から分かっています。偽造品は決して無害な存在ではなく、長期的には健康被害につながる可能性が高い。」と、Vidyuth氏は警鐘を鳴らしています。

 

 

4. CEOの価値観に見るZenLuxeへの期待

最後に、「一生ひとつだけバッグを持つとしたら、どんなバッグを選びますか?」という質問を投げかけました。Vidyuth氏は少し照れた様子で「実は、あまりモノを買うのが好きではないんです」と前置きします。
唯一こだわっているのは「香水」で、バッグや服にはあまり執着がない。それでもあえて選ぶなら、「ロゴが主張しない、ミニマルなBottega Veneta」のバッグと答えてくれました。
実際に、最近奥さまにボッテガのバッグをプレゼントしたものの、「大事すぎてなかなか外に持ち出してくれない」とのこと。大切なものほどしまい込んでしまう─そんなエピソードに、和やかな空気に包まれました。
インタビューの締めくくりに、Vidyuth氏は「ぜひ、ZenLuxeで鑑定済みの本物を選んでほしい」とメッセージを残しました。ブランドリユースにテクノロジーを掛け合わせることで、「安心して選べる中古品」を世界のスタンダードにしていきたい。その思いが、EntrupyとZenLuxeの共通言語になっていると感じられるインタビューでした。

▼インタビューのフルバージョンは、以下のリンクよりご覧いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=J7kKO5FW2v4

 

 

5. 越境ECで、ブランド中古品を安心して届けるために

Entrupy共同創業者兼CEOのVidyuth Srinivasan氏へのインタビューは、ブランドリユースと越境ECの未来を考えるうえで、多くの示唆に富んでいました。AIと人の力を掛け合わせ、圧倒的な鑑定精度を誇るEntrupyは、世界中で活用される「偽造品に立ち向かうインフラ」へと成長しています。


その背景には、「信頼を提供するからには、自分たち自身も信頼されなければならない」という強い覚悟がありました。
Entrupyでは真贋鑑定にとどまらず、金銭保証制度やMarket Edgeなどを制度化し、鑑定結果を起点に事業者のリスクを減らして販売戦略を支えるパートナーとしての役割も担っています。偽造品が精巧になるほど、本物だと証明する方法や、誤判定が起きたときの対応が、一層重要になっていくでしょう。


ZenGroupが運営するZenLuxeは、こうしたテクノロジーを積極的に取り入れながら、日本発のプレミアム中古品を安心して世界に届けることを目指しています。「海外の顧客に、ブランド中古品をもっと安心して購入してほしい」「偽造品リスクを低減しながら、越境ECを伸ばしていきたい」とお考えの企業の皆さまは、ぜひお気軽にお問合せください。

 

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