- 食品の越境EC市場の現状と今後の可能性
- 越境ECで売れやすい食品の特徴6選
- 食品越境ECの始め方と販売手段の選択肢
- 食品越境ECで絶対に確認すべき規制と対応
- 配送・決済・カスタマー対応の課題と対策
- まとめ:食品越境ECを成功に導くために大切なこと
人口減少や国内需要の低迷が予想される中、多くの事業者が新たな販路として越境ECに注目しています。特に日本の食品は、品質の高さや独自の文化的背景から海外でも根強い人気を誇り、オンラインを活用した販売手法として越境ECは今や現実的かつ有力な選択肢となりました。
しかし、実際に始めてみようとすると「どんな食品が売れるのか?」「輸出の規制は?」「どの販売方法を選べばいいのか?」といった多くの疑問や壁に直面します。
この記事では、越境ECで食品を販売したい方に向けて、市場の現状から成功しやすい商品の特徴、販売手段の選び方、規制対応、売上を伸ばすための施策までをわかりやすく解説します。海外への第一歩を後押しする、実践的なガイドとしてお役立てください。
1. 食品の越境EC市場の現状と今後の可能性
越境EC(国境を越えた電子商取引)は、年々市場規模を拡大しており、その中でも、食品は注目を集める分野のひとつです。かつては輸出のハードルが高く、限られた大企業だけが参入できた食品の海外販売も、近年ではオンラインモールや物流、決済サービスの整備により、中小企業や個人事業者でも挑戦しやすい環境が整いつつあります。
とりわけ日本の食品は、高品質・安全・ユニークな文化的価値といった点で海外消費者の支持を得やすく、越境ECを活用することで、海外市場における新たな売上チャンスを創出できます。

1-a. 世界市場における日本食品のニーズ
日本の食品は、その高い品質、安全性、そして文化的な魅力から、世界中で注目を集めています。中でも、日本ならではの味や食材を活かした「緑茶」「日本酒」「お菓子」「レトルト食品」「即席麺」などは、海外の生活者にとって“体験してみたい日本文化”として消費される傾向が強まっています。
こうした背景を受けて、日本食品を扱う越境ECサイトの訪問者数や購入率も年々上昇しています。コロナ禍以降、リアルな日本旅行が制限されたことで、オンライン上で“日本の味”を求める需要が高まった点も追い風となりました。
1-b. アジア太平洋地域での成長性
越境EC市場の中でも、アジア太平洋地域は特に重要なターゲットエリアです。たとえば中国、台湾、ベトナム、インドネシアなどでは、日本食品の信頼性やブランディングに対する関心が高く、購買意欲も旺盛です。
これらの国々では、現地の物流インフラの発展やECモールの利用浸透も進んでおり、販売環境の整備が急速に進んでいます。また、現地語対応やSNSマーケティングなどを強化することで、日本国内にいるよりも広範なファン層を獲得できる可能性もあります。
食品の越境ECは、まさに今、広がりつつあるグローバル市場の波に乗る有効な戦略であり、特にアジア圏を中心とした市場は、日本の食品事業者にとって“攻めるべきフィールド”として注目に値します。
2. 越境ECで売れやすい食品の特徴6選
食品の越境ECに挑戦する際、どんな商品が海外市場で受け入れられやすいのかを見極めることは、成功の可否を左右する重要な要素です。日本国内では人気のある食品でも、越境ECでは、重量・保存性・輸送性、文化的魅力、現地の需要や嗜好など複数の観点から適性を判断する必要があります。
また、多くの競合が存在する中で、ただ販売するだけでなく選ばれる理由が明確であることも重要です。ここでは、海外市場で実際に売れている傾向や、各国の輸入事例をもとに、越境ECで販売しやすい食品の特徴を6つに整理して紹介します。

2-a. 軽くて小型である
国際配送では、重量や体積が送料に直結します。軽量かつコンパクトな食品は配送コストが抑えられ、価格競争力を維持しやすいため、EC向きです。たとえば小分けされたスナックや乾燥食品、粉末飲料などは代表的な例です。
また、保管時にもスペースを取らず、在庫管理の効率が良いため、販売者側にとってもメリットの大きい商材です。
2-b. 賞味期限が長く常温保存できる
長距離輸送と現地での流通を考えると、賞味期限が長い、冷蔵・冷凍が不要という条件は極めて重要です。レトルト食品やインスタント食品、缶詰、乾物などは越境ECに適した商材として多くの成功事例があります。
保存条件がシンプルであれば、海外の消費者にとっても取り扱いやすく、購入のハードルが下がります。
2-c. 日本らしさが感じられる食品・パッケージ
海外ユーザーの多くは、日本らしさに価値を感じて商品を購入しています。味や素材だけでなく、和柄や筆文字、職人の写真など“日本文化”を感じさせるデザインは重要な差別化要素です。
特にアジア圏では、パッケージのビジュアルがSNSでシェアされるケースも多く、販促効果にもつながります。
2-d. 日本の伝統食品(味噌・緑茶・お菓子など)
近年、日本の伝統食品が“ヘルシーでオリエンタル”な存在として注目されています。発酵食品である味噌や醤油、抗酸化作用があるとされる緑茶、昔ながらの和菓子などは、健康志向の強い欧米ユーザーにも支持されています。
現地のビーガン・グルテンフリー市場への応用も期待でき、ストーリー性のある商品展開が可能です。
2-e. 外国人観光客に人気の食品
訪日観光客が日本滞在中に購入したお土産食品は、越境ECにおける“リピート需要”として非常に有望です。たとえば抹茶味のスナック、日本限定のフレーバー商品、高級チョコレートなどは、帰国後も再購入される傾向があります。
訪日体験とEC購入をつなげることで、継続的なファン獲得にもつながります。
2-f. ギフト需要を満たす食品
ギフト文化が根付いている国・地域では、パッケージの美しさやセット商品の構成が購入の決め手になります。価格帯を調整しやすく、季節限定・数量限定といったプロモーションも行いやすいため、ギフト需要に合わせた商品展開は売上拡大に有効です。
特に、中元・クリスマス・旧正月などのイベントにあわせて、時期限定のギフトセットを用意することで販売のピークを作ることができます。
3. 食品越境ECの始め方と販売手段の選択肢
「越境ECに挑戦してみたいが、何から手をつければいいのかわからない」という声は多く聞かれます。実際、食品の越境ECでは、販売方法の選択がビジネス全体の成否に直結します。
大きく分けて、自社サイトを海外対応させる方法、既存の越境ECモールに出店する方法、そして海外特化型プラットフォームを利用する方法の3パターンがあります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、事業フェーズやリソースに応じた選択が必要です。ここでは、それぞれの特徴と向いている事業者タイプについて詳しく解説します。
3-a. 自社サイトの越境対応(Shopifyなど)
自社ブランドを強化したい事業者におすすめなのが、自社ECサイトを構築して越境対応する方法です。Shopify、カラーミーショップ byGMOペパボ、BASE、futureshopなど、多言語・多通貨・海外配送に対応できるサービスが登場しており、初期投資を抑えながら国際展開が可能になりました。
メリットは、ブランディングの自由度が高く、顧客情報や購買データを自社で保持できる点。デメリットは、集客を自社で行う必要があるため、SEOや広告運用、SNSマーケティングなどの知識や工数が求められる点です。
3-b. 越境ECモール出店(Amazon・ZenPlusなど)
スピーディに販売を開始したい場合は、越境ECモールへの出店が最も現実的です。代表的な例としてはAmazon Global、Shopee、楽天グローバルマーケット、ZenPlus(ゼンプラス)などがあります。
これらのモールは既に海外ユーザーを多数抱えており、集客力があるため露出効果が高いのが魅力です。さらに決済・物流・通関などの支援体制が整っていることも多く、越境EC初心者にとって大きな助けになります。
一方で、モールごとのルールや手数料体系に従う必要があり、ブランディングの自由度が制限されることもあります。
3-c. 海外特化型プラットフォームの活用
特定の国や地域にターゲットを絞って展開したい場合は、その国に特化した現地プラットフォームや現地パートナーの活用が有効です。たとえば中国市場であればTmall Global、台湾であればPinkoi、アメリカならYamibuyなどが該当します。
現地文化や嗜好に最適化された環境下で販売できる点が大きな魅力で、言語や決済事情もプラットフォーム側がカバーしてくれるケースが多いため、ローカライズを一気に進めたい企業に適しています。
ただし、契約手続きや出店審査が厳しい場合もあるため、事前準備と専門知識が求められます。
3-d. 最適な販路の選び方のポイント
どの方法が最適かは、以下のような要素によって変わってきます。
- 自社商品の認知度とブランド戦略
- リソース(人員・予算・知識)の量
- 販売ターゲット国の明確さ
- 海外販売の経験値(初心者 or 拡大フェーズ)
- 自社での集客力の有無
たとえば、初めて越境ECに挑戦する食品製造事業者であれば、まずはモール出店から始め、経験を積んだ後に自社サイトや現地展開へ広げていく“ステップ戦略”が有効です。
重要なのは、販売チャネルありきで考えるのではなく、自社の目的と体制にあった方法を選ぶこと。焦って全方位に展開しようとすると、コストや運用の負荷が膨らみ、かえって成果が出にくくなる可能性もあるため注意が必要です。
4. 食品越境ECで絶対に確認すべき規制と対応
食品を越境ECで販売する際には、売りたいだけでは成立しないという現実があります。なぜなら、食品は人の健康に直結する商材であり、輸出先の国ごとに細かな規制やルールが存在するからです。とくに注意すべきは、輸入禁止品目、食品表示、検疫・通関、アレルギー表示などの法令・制度であり、これらに違反すると罰則や販売停止、最悪の場合には訴訟リスクまで発展します。
その一方で、これらのポイントを事前に正しく理解し対応しておくことで、安心・安全な日本製品としての信頼を構築する武器にもなります。ここでは、食品越境ECに取り組む前に押さえておきたい主要な法規制とその対応策について、4つの観点から解説します。
4-a. 輸出先の食品輸入規制
まず確認すべきは、販売先の国でそもそもその食品が輸入可能かどうかです。たとえば、肉類や乳製品、卵を含む食品は、国によっては一部またはすべてが輸入禁止対象となっている場合があります。また、特定の添加物や成分が規制されていることもあります。
日本から食品を送る際には、各国の通関・検疫当局が定めるルール(例:アメリカFDA、中国CIQ、EUのEFSAなど)を事前にチェックし、禁止品目や必要書類を確認しておく必要があります。販売プラットフォームや物流業者によっては、対応実績のある商品リストを提供している場合もあるため、積極的に情報収集を行いましょう。
4-b. 食品表示の多言語対応とルール
食品の越境販売では、商品パッケージや説明文に含まれる表示内容も重要なチェックポイントです。原材料名、添加物、栄養成分、保存方法、賞味期限などを、販売対象国の言語・表記ルールに従って明記することが求められます。
たとえば、EU圏ではアレルゲン表示の強調義務や栄養成分表の必須表示、アメリカでは原産国表示、カロリー表記の厳格なルールが存在します。これらを怠ると、販売停止や輸送時の差し戻しになるリスクもあります。
そのため、輸出専用ラベルを作成する、または翻訳対応済みの個別パッケージを用意するといった対応が必要です。初めは少量でテスト販売し、現地の消費者の反応を見ながら対応精度を上げていく方法も有効です。
4-c. 国際認証(HACCP・FDA・CODEX)取得の有無
食品の安全性や品質の担保として、国際的な衛生・製造基準の取得は重要な信頼要素になります。たとえば、以下のような認証は多くの国やバイヤーが評価基準としています。
- HACCP(ハサップ):国際的な衛生管理基準。日本でも義務化済み。
- FDA登録:アメリカ市場での輸出販売には必須。
- CODEX規格:国際連合主導の食品規格、特に欧州向けで重視される。
これらの取得は義務でないケースもありますが、取得しておくことでECモールでの掲載順位が上がったり、法人バイヤーからの信頼を得やすくなったりといった実利があります。
4-d. アレルギーや成分表示の徹底
国によっては、アレルギー表示に関するルールが非常に厳格です。特に乳・卵・小麦・ナッツ類などのアレルゲンは表示義務があり、表示漏れによる健康被害が発生した場合、企業が責任を問われるケースもあります。
越境ECで食品を販売する際は、原材料の正確な翻訳とアレルゲンの明示を徹底することが絶対条件です。さらに、文化や宗教に配慮した表記(例:イスラム圏ではハラール対応の明記など)も信頼構築につながります。
5. 配送・決済・カスタマー対応の課題と対策
食品の越境ECは、商品自体の魅力だけでなく、届くまで・買うまで・問い合わせるまでの体験全体が、購入判断に強く影響します。とくに国際配送のスピードとトラブルの少なさ、現地ユーザーが使い慣れた決済手段の有無、多言語でのカスタマー対応は、“信頼できるショップかどうか”を判断する重要なポイントです。
越境EC運営における代表的な3つの課題とその対処法を紹介します。

5-a. 国際配送で起きやすいトラブルと対処法
食品を海外に送る際は、天候・通関・物流事情など、さまざまな外的要因によって配送遅延や紛失リスクが生じます。特に食品は賞味期限や保存温度の制約があるため、遅れないこと・壊れないことが強く求められます。
その対策として、以下のような工夫が必要です。
- 追跡機能付きの配送手段を選ぶ
- 通関経験のある物流パートナーと提携する
- 配送エリアごとに最適なキャリアを使い分ける
また、配送遅延時にユーザーへ自動通知できる仕組みを導入することで、不安感の軽減とクレーム抑止にもつながります。
5-b. 海外ユーザーに合わせた決済手段
海外の消費者は、自分が使い慣れている決済方法が使えるか、を重視しています。日本国内では主流のクレジットカード決済も、国によっては普及率が低く、PayPalやAlipay、Apple Pay、現地の電子マネーが好まれることもあります。
越境ECサイトや出店モールを選ぶ際には、ターゲット国でよく利用される決済手段をサポートしているかどうかを事前に確認し、決済離脱を防ぐ仕組みを整えましょう。
5-c. 多言語対応とカスタマーサポートの整備
言語の壁は、海外ユーザーの信頼獲得を阻む大きな障壁です。購入前の問い合わせや、配送中・配送後のトラブル対応をスムーズに行うには、多言語対応の体制づくりが欠かせません。
対応方法としてはリソースに応じた柔軟な対応が求められます。
- モールや代行サービスを通じて対応する(例:ZenPlusの多言語カスタマー対応)
- 翻訳アプリ+テンプレートで簡易対応する
- チャットボットの活用や営業時間の明記を徹底する
言葉の通じる対応は、信頼とリピート購入につながる重要な接点です。
6. まとめ:食品越境ECを成功に導くために大切なこと
食品の越境ECは、市場の成長性と日本食品への高い需要を背景に、大きな可能性を秘めたビジネス領域です。しかし、その一方で、規制対応や配送の工夫、適切な販売チャネルの選定など、入念な準備と運用が求められます。
本記事で紹介した視点を参考に、ターゲット市場を見極め、売れる商品と届け方を戦略的に設計することで、海外販路の拡大と継続的な売上につなげることができるでしょう。
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