目次
1. 在庫「管理」システム?在庫「連携」システム?
在庫管理システムと在庫連携システムの違いを理解するために、まずは、それぞれの言葉の意味から考えてみましょう。
「在庫管理」とは、企業が保有する商品の在庫を、必要な時に必要な場所に、必要な数量だけ供給できるように、在庫の量や状態を把握し適切に管理することを指します。
一方、「在庫連携」とは、受注状況や仕入状況に応じて、複数のECサイトや実店舗の在庫状況を常に最新の情報に保つことを指します。
それでは、実店舗AとECサイトB、ECサイトC の合計3チャネルで商品を販売しているケースを考えてみましょう。
3チャネル合計で在庫を10個持っており、ECサイトBで商品が5個売れた場合には全体の在庫は5個になります。この在庫状況を複数拠点で連携させ、最新の情報に保つことが「在庫連携」です。そして、在庫の増減に応じて追加発注をしたり、データを分析したりすることが「在庫管理」です。
「在庫管理システム」とは、在庫の量や状態を把握して適切に管理するための包括的な体系であり、そのうちの一つの機能として「在庫連携システム」がある、ということです。
2. 在庫管理システムの主な機能
在庫管理システムには様々な機能があります。システムによって細かい機能は異なりますが、ここでは在庫管理システムの主な機能について説明します。
2-a. 入出庫管理(在庫連携)
製品や商品などの入出庫時の個数管理、検品管理を行う機能です。入庫時の受取確認機能やバーコードスキャニング、ロケーション管理、出荷時のピッキング機能などがあり、正確に在庫情報を管理できます。
2-b. 棚卸機能(在庫連携)
システム上の在庫データと実際の在庫数を確認する棚卸のための機能です。スキャナーなどで在庫のラベルを読み込むと、在庫データと数量があっているかを自動的に確認できます。
2-c. 返品処理(在庫連携)
顧客からの返品を処理し、返品商品の受け入れ、検査、返金や交換を管理する機能です。返品承認管理、返金・交換機能などがあり、漏れなく作業を進めることができます。
2-d. データ抽出機能
システム上にあるデータの中から、必要な情報を抽出・加工する機能です。容易に、的確に抽出することができ、分析ミスを減らすことができます。
2-e. 在庫分析機能
過去の入出荷状況、現在の在庫状況などのデータを分析し、今後の需要予測を行う機能です。ターンオーバーレート分析、ABC分析、安全在庫レベル分析などの多様な方法で分析を行います。
3. 在庫管理システムの種類
在庫管理システムにはどのような形態があるのでしょうか。大きく以下の2つに分類されます。
3-a. SaaS型(Software as a Service)
ベンダーが所有・管理しているシステムをインターネットを通じて利用するソフトウェアです。複数の企業が共同して使用しているため、自社用にカスタマイズすることが難しいというデメリットはありますが、自社のサーバーを設置する必要がなく初期導入費用を抑えることができます。また、システムの管理・運用はベンダーが行うため、サーバーの知識をもつIT技術者を雇う必要がありません。
3-b. オンプレミス型
自社のサーバーにシステムをインストールし、自社内で管理・運用するソフトウェアです。自社内で管理・運用するため、ハードウェア導入の初期費用やサーバーを管理するIT技術者の人件費などがかかる一方で、セキュリティが充実しており、社外に情報が漏れる可能性が低いというメリットがあります。また、柔軟なカスタマイズが可能で、他社システムとインフラを共有する必要がないため、安定した運用ができます。
4. 在庫管理システムを導入するメリット
在庫管理システムを導入することによって、企業はさまざまなメリットを得ることができます。
4-a. 売上機会の獲得
在庫管理システムを導入することで欠品を防ぎ、その場の売上機会を逃さず獲得することができます。複数店舗の在庫状況をリアルタイムで把握できるだけでなく、一定の在庫数量を切った場合にアラートを出す機能もあるため、大量注文などの在庫数の減少にもすぐに対応することができます。
4-b. コストの削減
最新の在庫数を正しく把握することで過剰発注を防ぎ、無駄な在庫を減らすことができます。過剰在庫を防ぐことで、倉庫スペースの賃料、光熱費などの保管に関わる費用や廃棄ロスなどのコストを削減することができます。
4-c. 作業効率の向上
在庫管理システムを使うことで、あらゆる作業を自動化することができます。都度在庫を数えて一つずつ個数登録をする必要がないため、手間が減るだけでなく、数え間違いや入力ミスなどの人的ミスも減らすことができます。
4-d. リスクの低減
適切な在庫管理を行うことで、商品の劣化や破損、盗難などによる在庫損失のリスクだけでなく、管理不足による品質劣化製品の出荷リスクも減らすことができます。