2025/06/25
事例
人間国宝に連なる“藤原家の備前焼”を次世代へ ~作家・藤原和氏の公式オンラインショップ「zikisai」にZenLinkを導入~ 1分で読めます
人間国宝に連なる“藤原家の備前焼”を次世代へ ~作家・藤原和氏の公式オンラインショップ「zikisai」にZenLinkを導入~ 1分で読めます

「備前焼の“型”を、次の世代に渡していくために。」

そう語るのは、陶芸家・藤原和氏。人間国宝に認定された父・祖父と同じ窯に立ち、日本の器文化と向き合ってきました。

この度、藤原家の備前焼作品と、藤原和氏が監修する工房作品「ジキサイブランド」を扱う公式オンラインショップ「zikisai」に、越境EC対応化サービス「ZenLink」が導入されました。

伝統と感性を両立させる備前焼と、その背景にある日本文化をどう海外に伝えていくのか。その挑戦についてお話しを伺いました。

 

ー 藤原備前の公式オンラインショップ「zikisai」を立ち上げた経緯について教えていただけますか?

きっかけは、友人から「備前焼を贈りたいけれど、高価すぎて気軽に贈れない」と言われたことでした。

それならと、洋服でいう“セカンドライン”のような位置づけで、手に取りやすい器を作ることにしました。僕がデザインを監修し、弟子たちが制作した器を販売しています。それが「ジキサイブランド」です。

僕は工芸の器に囲まれて育ちましたが、弟子たちは市販の食器に馴染んできた子が多い。だからこそ、彼らの手から生まれる器は家庭的で、日常づかいにちょうどよく、親しみやすい器が揃っているのも魅力です。

もともとホームページは2002年ごろからありましたが、販売ページはありませんでした。コロナ禍で買い物がしづらくなったタイミングで、藤原家の備前焼や「ジキサイブランド」の器を扱う公式オンラインショップ「zikisai」を立ち上げました。

ー ZenLinkを導入した背景を教えてください

最近は海外からのアクセスが増えています。たとえばオーストラリアから茶入れの注文が入ったのですが、その際「木箱での発送はNG」と言われ、あらためて国ごとの対応の難しさを感じました。

海外での個展や講演の機会も多いため、海外の方とのやりとり自体には慣れているつもりでしたが、価格調整や関税のことなど、細かい対応が必要で、結局そのやりとりだけで1週間以上かかってしまったんです。

ネット販売は相手の顔が見えないからこそ、慎重に対応しなければいけません。しかし、制作も販売も基本的には私ひとりで行っているので、限界を感じていました。

私はITがとにかく苦手で、専門用語もまったく入ってこないんです。どこをクリックしたら何が起きるのか、頭に入らない。在庫管理や送料対応も含めて、自分で全部こなすのが難しくなってきた頃、ZenLinkを紹介してもらいました。

「これがあれば、任せられるかもしれない」と、まさに救いの手を差し伸べられたような感覚でした。すぐにデザイナーに相談したところ、「やろう」と6時間後には返事が来て。まさにトントン拍子で導入が進みました。

 

ー 導入後に感じた変化はありましたか?

ありがたいことに、ストレスを感じていた部分や余計な労力が一気に減りました。今は、私が写真を撮って商品情報をまとめるだけで、ZenLinkを通じて販売ページに反映できるようになりました。将来的にまた別の課題が出てくるかもしれませんが、少なくとも今は「自分で全部やらなくていい」ことに、本当に救われています。

やはり、「任せられる仕組み」があるのは大きいです。自分の専門を伸ばして、苦手な部分は無理せず任せる。それが一番健全な形だと思っています。

ZenLinkは、販売の仕組みだけでなく、集客面でのサポートもあると伺っていて、心強く感じています。

 

ー  備前焼を海外に届けるうえでの工夫は?

備前焼は一つひとつ個性が違うので、ネット販売に向いているとは言いにくい部分があります。たとえば、ロイヤルコペンハーゲンのようなヨーロッパの器は、色も柄も規格が決まっていて、「これはケーキ用、これは紅茶用」と、買う人も想像がつきやすい。一方、備前焼は全部が一点もの。重さも形も微妙に違うから、画面上でイメージするのが難しいんです。

だからこそ、うちでは器に料理を盛った写真を一緒に掲載しています。器と料理の写真を載せた写真集的なページもつくっていて、使う場面を想像しやすいように工夫しています。

また、海外の方の食器をえらぶ感覚というのも、日本と大きく違います。土の色、凹凸の微妙な質感・風合いを感じる力は、日本人の方が強いように思います。一方ヨーロッパでは、色そのものの主張を重視する感覚が強いため、白地に赤い線が入った「緋襷(ひだすき)」のような器は、展示会のパンフレットでもアイキャッチとして使われることが多いんです。

さらに日本人は、作品そのものから感性で選ぶ傾向があるのですが、海外の方はまずプロフィールや背景、文化的文脈を理解した上で作品を選ぶ傾向があります。たとえば、備前焼で使用する土は、65年前に採取して寝かせておいていることや、1,000年以上窯の火を絶やさずに続いているのは、世界で備前焼だけであること。そういった背景にこそ、本物の価値がある。だからこそ、海外向けの販売では、「なぜこの器がこういう形で生まれたのか」という背景も丁寧に伝えていく必要があると感じています。

 

ー  今後の展望について教えてください。

僕は今66歳ですが、明治生まれの陶芸家や日本画家、彫刻家たちと直接ご飯を食べ、一緒に時間を過ごした経験を持つ最後の世代かもしれません。そういう空気を知っていることが、僕の財産であり、次世代に繋いでいくことが自分の使命だと思っています。

今の時代がどこへ向かうかは分かりません。それでも、「守るべきもの」は確かにある。先代が築き上げた「型」から、若い人たちが何かを受け取れるように、伝えていける仕組みをこれから作っていきたいです。

今後も、未来に向けて販売の仕組みを見直しながら、ZenLinkとともに取り組みを続けていけたらと思っています。